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書籍(参考資料)
「戦闘機「飛燕」 技術開発の戦い」
基本情報
著者:碇 義郎 出版社:廣済堂出版 Kosaido books 定価(税込):580円(1977年) 初版発行:1977年4月 JP番号:77018862
著者:碇 義郎 出版社:光人社 光人社NF文庫 定価(税別):648円(1999年) 初版発行:1996年10月14日 日本図書コード ISBN-10:4769821379 ISBN-13:9784769821373
書籍概要
日本陸軍の「三式戦闘機『飛燕』」の開発過程や技術的事柄、戦歴を紹介した書籍である。
本書は、大東亜戦争に於ける日本軍唯一の液冷戦闘機である「三式戦闘機『飛燕』(キ61)」に関して詳細に解説している。 本書では、「飛燕」が開発された経緯や設計コンセプト、機体やエンジンの技術的な特徴、開発過程に於いて発生した様々な問題点とその対策、部隊に於ける運用状況や戦歴、工場に於ける量産の状況、各種性能向上型の研究の様子などが紹介されている。
本書は、ほぼ時系列順に7つの章から構成されている。 序章では、大東亜戦争末期の昭和19年(1944年)10月12日、台湾に来襲した米海軍第58任務部隊の「グラマン F6F ヘルキャット」約40機と、これを迎撃した陸軍第八飛行師団集成防空第一隊の「飛燕」2機による空中戦の様子が詳細に描かれている。本章では、実戦に於ける「飛燕」の活躍を垣間見る事ができる。 第一章では、序章から時代を遡ること18年前の昭和2年(1927年)、後に川崎航空機で「飛燕」の設計を指揮することになる土井武夫が川崎造船所飛行機部(後の川崎航空機)に入社した頃から昭和10年(1935年)頃までの様子に焦点が当てられている。この時代は、日本の航空機産業が技術的に自立しつつある頃であり、またそれまでの複葉機から金属製単葉機に移行しつつある頃であった。 第二章では、「三式戦闘機『飛燕』(キ61)」誕生の直接的な原因となった、ドイツのダイムラーベンツ社製航空用液冷発動機(エンジン)「DB601」と、「キ61」に先行して設計・試作された液冷エンジン搭載の「キ60」に焦点が当てられている。特に、「DB601」を国産化した「ハ40」(陸軍呼称)と「アツタ」(海軍呼称)は、大東亜戦争中に使用された唯一の航空機用液冷エンジンとなった。また、これまでの軽戦闘機から「キ60」を始めとする重戦闘機が主流となっていく様子も紹介されている。 第三章では、「キ60」と平行して設計が進められていた「キ61」が、昭和16年(1941年)12月12日に初飛行した後、各種審査を経て大量生産に入る様子が紹介されている。併しながら、液冷エンジン搭載機特有の装備である冷却器やエンジン「ハ40」本体に多発した故障の状況やその対策など、後に「三式戦闘機」として正式採用された後も続出する多くの故障に関して述べられている。 第四章では、昭和18年(1943年)以降、次々と編成された「飛燕」装備部隊に焦点が当てられ、特に、東部ニューギニアに展開した飛行第六十八戦隊・飛行第七十八戦隊の活動の様子が紹介されている。また、ドイツから輸入された20ミリ機関砲(マウザー砲)に関する記述もある。 第五章では、内地に於ける「飛燕」の生産の様子と性能向上型の開発、また、前線に於ける「飛燕」の活躍について焦点が当てられている。また、当時、川崎航空機で開発が行われていた各種の特殊機(「キ64」「キ78」「キ88」等)についても言及されている。 第六章では、「三式戦闘機」から発展した「五式戦闘機(キ100)」に焦点が当てられている。昭和19年(1944年)9月から「キ61一型」換わって「キ61二型改」の生産が開始されたが、これに搭載された液冷エンジン「ハ40」「ハ140」の故障と生産遅延が相次いた。そこで、「飛燕」の「ハ40」「ハ140」を、より信頼性の高い空冷エンジン「ハ112」に換装、「キ100」として昭和20年(1945年)2月に初飛行した。「キ100」は予想外の高性能を示し、「五式戦闘機」として正式採用された。
本書は、「三式戦闘機『飛燕』」に関する内容が詳しく書かれているが、決して専門書というわけではなく、特別な専門知識は必ずしも必要としない。文章も比較的平易に書かれており、航空機に関する初心者が読んでも特に問題はないだろう。勿論、ある程度の知識を持った人が読んでも、決して物足りないことはなく、十分に有益な内容である。
本書は、「三式戦闘機『飛燕』」の開発過程、機体の特徴や性能、戦地での活躍の様子など、その全てを知るのに最適な一冊である
目次 (光人社 光人社NF文庫)
はじめに 序章 台湾を襲った嵐 グラマン対「飛燕」・・・・・・・17P 二十対一の戦い・・・・・・・20P 第一章 若きパイオニアたち 見習いからの出発・・・・・・・32P 飛んでみなければ分からない・・・・・・・36P テストパイロットの心意気・・・・・・・44P 日英のかけ橋・・・・・・・50P 最後の複葉戦闘機・・・・・・・53P 第二章 欧州の余波 ドイツのエンジンを購入・・・・・・・66P 重戦は世界の主流・・・・・・・72P 万能戦闘機の誕生・・・・・・・80P メッサーよりも強い機を・・・・・・・87P 第三章 「飛燕」飛ぶ 開戦の興奮とともに・・・・・・・102P 零戦では追いつけない!・・・・・・・113P 波乱の試作機時代・・・・・・・118P 整備員泣かせの国産エンジン・・・・・・・125P 第四章 新鋭機の活躍 海を渡る陸軍機・・・・・・・136P トラブル続出・・・・・・・140P 南海の消耗戦・・・・・・・145P 恐るべきマウザー砲・・・・・・・155P 第五章 銃後の戦い 舞いこんだ大臣表彰状・・・・・・・166P あいつぐ特殊機の試作・・・・・・・176P 高性能に救われる・・・・・・・185P 戦力回復のため内地帰還・・・・・・・191P 一万メートルへの挑戦・・・・・・・198P 悲しき恋心・・・・・・・206P 勤労学徒の修理作業・・・・・・・214P 第六章 五式戦の登場 首なし「飛燕」・・・・・・・222P 決意を秘めた若武者・・・・・・・236P 五式戦出動!・・・・・・・246P 意気上がる最後の戦果・・・・・・・256P エピローグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・268P 三式戦/五式戦関係諸元・・・・・・・・275P 文庫版のあとがき・・・・・・・・・・・・・・・279P
関連書籍
「大空の攻防戦」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「三式戦闘機『飛燕』」を装備した飛行第二百四十四戦隊について 「重い飛行機雲 太平洋戦争日本空軍秘話」・・・・・・・・・・・・・「三式戦闘機『飛燕』」を装備した飛行第二百四十四戦隊について 「遥かなる俊翼 日本軍用機空戦記録」・・・・・・・・・・・・・・・・・「三式戦闘機『飛燕』」を装備した飛行第二百四十四戦隊について 「太平洋戦争航空史話(上)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「五式戦闘機」を装備した飛行第十八戦隊について
関連項目
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