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書籍(参考資料)
「大空の攻防戦」
基本情報
「大空の攻防戦」
著者:渡辺 洋二 出版社:朝日ソノラマ 新戦史シリーズ48 定価(税込):620円(1992年) 初版発行:1992年3月10日 日本図書コード ISBN-10:4257172487 ISBN-13:9784257172482
書籍概要
大東亜戦争に於ける、日本陸海軍機関連の戦記を纏めた短編集である。
本書の著者である渡辺洋二氏は、長年にわたって大東亜戦争中の航空戦史を研究しており、資料収集はもとより、多くの元軍関係者に取材を行ってきた。そして、その取材内容を主体として資料に裏付けられた航空戦史を多数執筆しており、その内容の詳細さと正確さには定評がある。また、当時の作戦や航空機に関しての評論も、浅薄な結果論や数値などによらず、長年の経験による的確な評論を行い、必要ならば辛辣な批判も辞さない姿勢は、著者の航空戦史にかける並々ならぬ熱意が伺える。 尚、本書以外にも、航空戦史の短編集多数が執筆されている。
本書は、それぞれ独立した8つの戦記から成っている。 1つ目は、昭和19年(1944年)1月17日、ニューブリテン島ラバウル上空で行われた日本海軍の「零戦」と米軍機との一大空中戦に焦点を当てている。この日の空中戦は「零戦」の完勝と言えるべき戦闘であり、その詳細が紹介されている。また、序盤には、昭和17年(1942年)初めから昭和19年(1944年)2月に至る約2年間、ラバウルに展開した日本海軍航空隊の活動の概要が説明されている。 2つ目は、水上戦闘機「強風」に焦点が当てられ、、日本本土に於ける「強風」の戦歴が紹介されている。その中では、米軍爆撃機「B-29」の邀撃、米海軍艦上戦闘機「F6F」との空中戦、沖縄諸島へ向かう偵察機の護衛、更には「強風」による夜間銃爆撃部隊の編成など、一般にはあまり知られていない「強風」の戦歴が詳細に記載されており、非常に興味深い。 3つ目は、大東亜戦争に於ける日本海軍の対潜作戦に関して概説している。その中では、航空機を用いた一般的な対潜哨戒の方法、対潜哨戒に用いる航空兵装・各種探知機の紹介、対潜哨戒専門の航空隊の編成などが紹介させており、当時の日本海軍の対潜哨戒の様子を知ることができる。 4つ目は、日本陸軍の戦闘機操縦者(パイロット)であった四宮徹中尉に焦点が当てられている。四宮中尉は、陸軍飛行第二百四十四戦隊の一員として「三式戦闘機『飛燕』」に搭乗、米軍爆撃機「B-29」への体当たり攻撃に参加した。その後、陸軍の対艦船特攻隊である第十九振武隊に参加し、沖縄諸島周辺の米軍艦船に突入して戦死、実に空と海の2回に渡って体当たりを敢行した。 5つ目は、陸軍戦闘機操縦者(パイロット)を養成する訓練部隊の1つであった第一練成飛行隊に焦点が当てられている。第一練成飛行隊は、「四式戦闘機『疾風』」を装備し、基礎教育を終えた若年操縦者に実用機の訓練を行うと共に、空襲の際には防空の任務も担っていた。昭和19年(1944年)3月下旬から昭和20年(1945年)8月の終戦に至る約1年間に渡る第一練成飛行隊の活動が記録されている。また、序盤では当時の陸軍航空に於ける訓練組織の概要も説明されている。 6つ目は、第二次世界大戦中に於いて、日本・ドイツ・イギリス・アメリカで開発・運用された偵察機に関して比較検討を行っている。ここでは、世間一般で論じられているようなカタログデータのみによる浅薄な性能比較に始終する事無く、その機体の開発コンセプトや運用実態も含め、総合的に判断を下しているのが興味深い。 7つ目は、米海軍の艦上戦闘機「F6F(ヘルキャット)」の夜間戦闘機型に焦点が当てられている。索敵用機上レーダーを搭載した「F6F-3N」「F6F-5N」の開発経緯、搭載された機上レーダーの性能と操作法が詳細に解説されると共に、これら夜戦型「F6F」を装備した米海軍・米海兵隊の航空部隊や母艦部隊の編成や戦歴が詳細に記載されている。戦歴に関しては、交戦した日本軍機も可能な限り調査されており、この章は夜戦型「F6F」の詳細な資料として価値があるだろう。 8つ目は、大東亜戦争中の戦史ではないが、当時、海軍搭乗員であった浜野喜作氏と陸軍戦闘機操縦者であった檜与平氏の訃報に関してである。本書の筆者は、当時の軍関係者への取材を主体として執筆活動をしており、元陸海軍パイロットに多くの知人がいる。浜野喜作氏と檜与平氏も戦史に於いては有名な人物であり、その人となりが紹介されている。
本書には、日本海軍関連が3つ、日本陸軍関連が2つ、米海軍・海兵隊関連が1つ、航空機一般に関するものが1つ、その他が1つ、計8つの短編戦記が収録されている。何れの戦記も詳細な調査と関係者への取材を元に書かれており、戦史資料としての価値も高い。 尚、本書は現在絶版である為、中古品しか入手できないが、一部の戦記は「重い飛行機雲」「遥かなる俊翼」などに収録されている。 本書は、大東亜戦争に於ける日本陸海軍の航空戦史を知る上では欠かせない1冊であろう。
目次
1 ラバウル上空の完全勝利・・・・・・・・・・・・・・5P 2 本土上空「強風」行動記録・・・・・・・・・・・・・45P 3 ドロナワ式対潜作戦始末・・・・・・・・・・・・・・71P 4 体当たり二回―四宮中尉の航跡 ・・・・・・・93P 5 教え、戦った四式戦部隊・・・・・・・・・・・・・113P 6 各国偵察機、実力くらべ ・・・・・・・・・・・・・153P 7 夜の「ヘルキャット」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・177P 8 二つの訃報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・251P あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・264P
関連書籍
「ラバウル海軍航空隊」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1 ラバウル上空の完全勝利 5P)
「重い飛行機雲 太平洋戦争日本空軍秘話」・・・・・・・・・・・・・・・・(4 体当たり二回―四宮中尉の航跡 93P) 「遥かなる俊翼 日本軍用機空戦記録」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1 ラバウル上空の完全勝利 5P) (2 本土上空「強風」行動記録 45P) (5 教え、戦った四式戦部隊 113P) 「写真が語る 「特攻」伝説」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4 体当たり二回―四宮中尉の航跡 93P)
「戦闘機「飛燕」 技術開発の戦い」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4 体当たり二回―四宮中尉の航跡 93P) 「決戦機 疾風 航空技術の戦い」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5 教え、戦った四式戦部隊 113P)
関連項目
航空母艦 「大鷹」 「雲鷹」 「海鷹」 「神鷹」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3 ドロナワ式対潜作戦始末 71P)
「零式艦上戦闘機」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1 ラバウル上空の完全勝利 5P)
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