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日本陸軍・日本海軍 米陸軍・米海軍・米海兵隊
書籍(参考資料)
「ガダルカナルを 生き抜いた兵士たち」
基本情報
著者:土井 全二郎 出版社:朝日ソノラマ 定価(税込):1500円(1995年) 初版発行:1995年7月 JP番号:95078951 日本図書コード ISBN-10:4257034394 ISBN-13:9784257034391
著者:土井 全二郎 出版社:光人社 光人社NF文庫 定価(税別):695円(2009年) 初版発行:2009年3月12日 JP番号:21557963 日本図書コード ISBN-10:4769825994 ISBN-13:9784769825999
書籍概要
ソロモン諸島ガダルカナル島を巡る攻防戦に参加した日本軍将兵の証言を集めた戦記である。
昭和17年(1942年)8月から昭和18年(1943年)2月までの約半年間、ソロモン諸島ガダルカナル島を巡って日米両軍の間に激しい攻防戦が展開された。この一連の戦闘は大東亜戦争に於ける重要な分岐点となった。 本書は、ガダルカナル島を巡る戦闘に於いて、日本軍将兵や軍属が如何にして戦ったかを詳細に綴った戦記である。また、本書の特徴は、生還した元将兵や遺族の証言・手記を基に実際に戦場で戦った将兵の目線で描かれている事である。
本書は、時系列にそって11の章から構成されている。
第一章では、昭和17年(1942年)8月7日に行われたソロモン諸島ガダルカナル島の対岸のフロリダ島と周辺の小島(ツラギ島・ガブツ島・タナンボコ島)の日本海軍水上機基地に対する米軍の侵攻に焦点が当てられている。この時、この地区に展開していた海軍部隊は殆ど玉砕、その最期の状況が生存者の証言から再現されている。この日以降、約半年間に渡ってガダルカナル島を巡る日米の攻防戦が開始される。
第二章では、ガダルカナル島ルンガ岬周辺で飛行場設営に従事した海軍設営隊に焦点が当てられている。昭和17年(1942年)7月6日、海軍の第十一設営隊・第十三設営隊はガダルカナル島に上陸し、飛行場の設営を開始した。併しながら、完成直前の8月7日、米軍が上陸を開始、飛行場は瞬く間に占領され、設営隊はジャングルに退避する事になった。この章では、生還した設営隊員の証言から、米軍上陸後も設営隊や警備隊の一部が果敢に戦闘を行っていた様子が紹介されている。
第三章では、ガダルカナル島を巡る一連の戦闘に於いて沈没した海軍艦艇に焦点が当てられている。昭和17年(1942年)11月12日・13日に行われた第三次ソロモン沖海戦では、日本海軍は戦艦「比叡」と駆逐艦「暁」「夕立」を喪失した。乗員の生存者や遺族の証言を基に、これら艦艇の最期の様子が描かれている。また、この時に実施された輸送作戦に参加して沈没した輸送船や、その乗員に関しても言及されている。
第四章では、当時ガダルカナル島に派遣されていた部隊の地元で起きた数々の不思議な出来事に焦点が当てられている。ガダルカナル島に派遣された部隊の地元駐屯地や留守宅では、部隊が同島で大きな損害を受けつつある時期、数々の不可解な現象が起きたと伝えられている。また、戦後に遺骨収集に訪れた元将兵で、現地で不思議な体験をした人が少なからずいるという。これらは科学的には説明のつかない出来事であるが、生存者や遺族の貴重な証言として記録されている。
第五章では、ガダルカナル島への輸送作戦に焦点が当てられている。飛行場を占領された事でガダルカナル島周辺の制空権は米軍に抑えられ、ガダルカナル島への物資補給は困難を極めた。結果、同島奪回の為に投入された部隊は忽ち物資不足に陥り、将兵は食料医薬品や武器弾薬の不足に苦しんだ。本書では、ガダルカナル島への困難な輸送に従事した将兵の様子が描かれている。
第六章では、昭和18年(1943年)1月14日にガダルカナル島に上陸した矢野大隊に焦点が当てられている。矢野大隊は、矢野圭作少佐以下約750名の部隊であり、ガダルカナル島撤退作戦を支援する為の決死隊であった。矢野大隊は、訓練や装備は不十分だったが実によく戦い、部隊の半数を失いながらもその任務を果たした。本章では、矢野大隊の戦闘の様子が詳細に描かれている。
第七章では、矢野大隊同様、ガダルカナル島撤退作戦支援を行った立岩支隊に焦点が当てられている。立岩支隊は、立岩新策大尉以下約350名の部隊であり、昭和18年(1943年)1月28日、ガダルカナル島西方のラッセル諸島バイシー島に上陸作戦を行った。これは、2月1日から開始されるガダルカナル島撤退作戦の支援を目的としたものであった。本章では、あまり知られていないバイシー島への上陸作戦の様子と、ガダルカナル島撤退作戦の様子、立岩支隊が目的を達してバイシー島から撤収するまでが紹介されている。
第八章では、ガダルカナル島で大きな損害を受けた歩兵第三十八師団の各部隊の将兵に焦点が当てられている。ガダルカナル島から撤退した第三十八師団は、その後もソロモン諸島に於ける戦闘に参加、多くの将兵が散華した。本章では、奇跡的に生還した元将兵の当時の様子が紹介されている。また、ガダルカナル島撤退作戦後の昭和18年(1943年)9月27日に行われたコロンバンガラ島からの撤退作戦(「セ」号作戦)に関しても言及されている。
第九章では、ガダルカナル島から日本軍が撤退した後、同島に取り残された将兵に焦点が当てられている。昭和18年(1943年)2月1日・4日・7日の3回に渡りガダルカナル島撤退作戦(「ケ」号作戦)が行われ、同島の残存日本軍部隊約1万名が撤退した。この撤退作戦は大きな損害も無く成功裏に終わったが、この時、撤収に間に合わず、取り残された将兵が少なからずおり、その多くは飢餓や米軍の掃討に斃れた。本章では、米軍の捕虜となって奇跡的に生還した元将兵の証言や手記が紹介されている。
第十章では、ガダルカナル島を巡る一連の戦闘に於いて、米軍の捕虜となった日本軍将兵に焦点が当てられている。ガダルカナル島内や周辺の海空戦に於いて捕虜になった日本軍将兵の多くは、ニューカレドニアのヌーメアやニュージーランドのフェザーストーンの捕虜収容所に送られた。本章では、収容所内における将兵の生活や、日本人捕虜同士の対立、暴動事件など、捕虜収容所で起きた様々な出来事が紹介されている。
第十一章では、山本五十六連合艦隊司令長官の戦死に焦点が当てられている。ガダルカナル島から日本軍が撤退した後も、ソロモン諸島を巡る日米の戦闘は続いていた。山本長官は、昭和18年(1943年)4月18日、最前線であるブーゲンビル島ブインの視察に向かう途中、待ち伏せていた米軍機に乗機を撃墜されて戦死した。本章では、山本長官の視察に向けて前線基地で行われた準備の様子や、当日、山本長官の到着を待いる最中に長官機撃墜の状況が目撃された時の模様、その後の捜索や遺体収容の状況などが詳細に紹介されている。
本書は、ソロモン諸島ガダルカナル島を巡る一連の戦闘の様子を描いた戦史であるが、元将兵の証言や手記を基に構成されている為、記述の殆どは個人個人の経験談である。その為、大局的な戦況はわかり難いが、当時の戦場の雰囲気や戦闘の苛烈さがリアルに表現され、一般的な戦史には登場しない戦場での出来事が紹介されている。そして、そこで戦う将兵の心情や心理が生々しく描かれている。これらは、決して作り事では無く、実際に起きた事なのである。
本書は、大東亜戦争当時、苛烈な戦場に身を置いた多くの将兵が、どれだけ祖国や家族を想っていたか、そして、どの様に散っていったか、その事実を知るために是非とも読むべき1冊である。
目次 (光人社 光人社NF文庫)
第一章 捕虜となりて友軍の砲火を聞く ツラギの戦い・・・・・・・19P 生き埋め五十三日・・・・・・・25P 友軍の砲火の下で・・・・・・・31P 第二章 飛行場設営隊の意外なる善戦 暁の急襲・・・・・・・39P 善戦敢闘続く・・・・・・・45P ふたたび三たび・・・・・・・51P 第三章 海に還った戦艦「比叡」艦長の遺骨 艦長の遺骨・・・・・・・61P 二隻の駆逐艦・・・・・・・67P 輸送船団全滅す・・・・・・・74P 第四章 なぜ玉砕部隊は故郷へ帰ったか 夢に出てきた兵隊・・・・・・・83P 幻の凱旋部隊・・・・・・・89P さまよう霊魂・・・・・・・96P 第五章 飢餓戦線まさに異常あり 隠密輸送に倒る・・・・・・・105P 無人島に生きる・・・・・・・111P 極限を超えた最前線・・・・・・・117P 第六章 矢野大隊がゆく 決死隊とは知らず・・・・・・・125P 肉攻班前へ・・・・・・・130P おじさん部隊がんばる・・・・・・・136P 第七章 撤収作戦発動の陰の主役として バイシー島上陸作戦・・・・・・・145P ついにX日が来た・・・・・・・150P 日本兵はいないか・・・・・・・157P 第八章 その後のガ島兵はどうなったか 水漬くかばね・・・・・・・167P 草むすかばね・・・・・・・172P 「セ」号作戦発動さる・・・・・・・178P 第九章 ガ島に取り残された兵士たち 撤収間に合わず・・・・・・・189P 敵中突破ならず・・・・・・・195P 撤収を知らず・・・・・・・201P 第十章 捕虜収容所の反乱 二十七名自決す・・・・・・・211P ニュージーランドに死す・・・・・・・217P つわものどもの夢の跡・・・・・・・224P 第十一章 連合艦隊司令長官の戦死 十三匹のイセエビ・・・・・・・233P 二本のパパイヤの木・・・・・・・239P 最後に ― いま、ガダルカナルはどうなっているか・・・・・・・247P ガダルカナル島戦史 略年表・・・・・・・・・・・251P あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・253P 文庫版のあとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・255P 主要参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・258P
関連書籍
「太平洋戦争航空史話(上)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第十一章 連合艦隊司令長官の戦死) 「太平洋戦争航空史話(下)」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第一章 捕虜となりて友軍の砲火を聞く) 「撃沈戦記」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第三章 海に還った戦艦「比叡」艦長の遺骨)
「戦艦入門 動く大要塞徹底研究」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第三章 海に還った戦艦「比叡」艦長の遺骨)
関連項目
「新潟県」>> 「山本五十六記念館」>> 「山本元帥の乗機の残骸」 「如是蔵博物館」>> 「山本元帥の遺品(博物館2階)」(乗機の残骸)
「キャンベラ(オーストラリア)」>> 「オーストラリア戦争記念館」>> 「山本長官機の部品」
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