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書籍(参考資料)
「決戦機 疾風 航空技術の戦い」
基本情報
著者:碇 義郎 出版社:白金書房 定価(税込):1300円(1976年) 初版発行:1976年2月 JP番号:69025195
著者:碇 義郎 出版社:廣済堂出版 Kosaido books 定価(税込):580円(1977年) 初版発行:1977年6月 JP番号:77018860
著者:碇 義郎 出版社:光人社 光人社NF文庫 定価(税別):686円(2001年) 初版発行:1996年5月14日 日本図書コード ISBN-10:4769821220 ISBN-13:9784769821229
書籍概要
日本陸軍の「四式戦闘機『疾風』」の開発過程や技術的事柄、戦歴を紹介した書籍である。
本書は、日本陸軍初の本格的重戦闘機である「四式戦闘機『疾風』(キ84)」に関して詳細に解説している。 本書では、「疾風」が開発された経緯や設計コンセプト、機体やエンジンの技術的な特徴、開発過程に於いて発生した様々な問題点とその対策、部隊に於ける運用状況や戦歴、工場に於ける量産の状況、各種性能向上型の研究の様子などが紹介されている。
本書は、ほぼ時系列順に8つの章から構成されている。 第一章では、大東亜戦争前に於ける、日本陸軍の航空機開発の仕組みや流れ、組織機構、当時の民間航空会社の状況などが説明されている。また、昭和15年(1940年)にドイツに派遣された技術調査団の活動や、その時に輸入されたメッサーシュミット社の「Me109(Bf109)戦闘機」に関しても言及されている。 第二章では、昭和12年(1937年)末から昭和13年(1938年)初頭にかけて、中島飛行機で開発が開始された「キ43(一式戦闘機「隼」)」「キ44(二式単座戦闘機「鍾馗」)」に関して説明されている。これらの機体、特に「キ44」の性能向上型として計画された「キ44三型」は、その後に「四式戦闘機『疾風』」に発展していく為、「疾風」の開発史を理解する上で重要な章である。 第三章では、「鍾馗(キ44)」の性能向上型に端を発し、正式に「キ84」として後の「四式戦闘機『疾風』」の開発が開始される状況が説明されている。また、この時すでに大東亜戦争が開戦しており、戦闘機のあり方が大きく変化していく状況も描かれている。 第四章では、「疾風」に搭載された日本で初の二千馬力級航空機用発動機(エンジン)である「誉(陸軍呼称:ハ45)」の開発過程に関して説明されている。「誉」は、「疾風」のみならず、大東亜戦争中に開発・生産された多数の陸海軍機に搭載され、まさに日本の国運を担ったエンジンであった。 第五章では、昭和18年(1943年)3月に「キ84」の試作一号機が完成、その後に増加試作機が生産されつつ、各種の技術的問題点を解決しながら開発が進められていく様子が描かれている。また、当時の航空機用プロペラの問題点に関しても言及されている。 第六章では、開発の進む「キ84」を初めて装備した飛行第二十二戦隊の編成や訓練、さらに戦地での活動の状況、「キ84」が昭和19年(1944年)4月に「四式戦闘機『疾風』」として制式採用されて主力戦闘機として量産が進められていく状況、性能向上型の計画や開発の状況などが説明されている。 第七章では、連合軍の反攻が激化して日本軍の戦線が後退して行く昭和19年(1944年)に於ける「疾風」の戦地での活動の様子が紹介されている。量産が開始された「疾風」の主戦場は、連合軍の迫る台湾やフィリピン諸島であった。特に、捷一号作戦の発動によって、フィリピン諸島には昭和19年(1944年)後半に多数の「疾風」が投入された。一部では、連合軍機に対して優勢な戦いをした「疾風」であったが、圧倒的な連合軍兵力の前にフィリピン諸島の戦局は悪化の一途を辿り、多くの「疾風」が搭乗員と共に失われた。 第八章では、昭和20年(1945年)に於ける「疾風」の戦歴に関して紹介されている。日本本土に対する米軍の空襲が本格化してくるに従い、「疾風」には本土防空も期待され、各種発展型が計画された。しかし、熟練搭乗員の不足や各種部品の品質低下により、「疾風」は次第に本来の性能を発揮するのが難しくなっていた。そして、遂には「疾風」も特攻機として使用されるようになっていった。また本章では、内地の部隊に於ける「疾風」の整備状況や、工場での生産の様子なども描かれている。
本書は、「四式戦闘機『疾風』」に関する内容が詳しく書かれているが、決して専門書というわけではなく、特別な専門知識は必ずしも必要としない。文章も比較的平易に書かれており、航空機に関する初心者が読んでも特に問題はないだろう。勿論、ある程度の知識を持った人が読んでも、決して物足りないことはなく、十分に有益な内容である。
本書は、「四式戦闘機『疾風』」の開発過程、機体の特徴や性能、戦地での活躍の様子など、その全てを知るのに最適な一冊である。
目次 (光人社 光人社NF文庫)
はじめに 第一章 大戦前夜の迷い メッサーシュミット社訪問・・・・・・・17P 試作機計画の改善・・・・・・・22P 第二章 軽戦から重戦へ 「隼」誕生までの苦悶・・・・・・・34P 異色の重戦キ44・・・・・・・44P Me109と一騎打ち・・・・・・・60P 第三章 二千馬力戦闘機計画 キ44三型からキ84へ・・・・・・・67P いたちごっこの重量と翼面積・・・・・・・74P 前代未聞、試作機百機・・・・・・・85P 「隼」「鍾馗」の善戦・・・・・・・99P 連合軍の反攻はじまる・・・・・・・104P 第四章 奇跡のエンジン「誉」 遅れていたエンジン開発・・・・・・・108P 十四気筒から十八気筒へ・・・・・・・110P 「誉」の出現・・・・・・・123P 苦難の空中実験・・・・・・・132P 第五章 期待を担う大東亜決戦機 試作一号機の完成・・・・・・・144P 好調だった試験飛行・・・・・・・150P 外国依存のプロペラ技術・・・・・・・160P 続出する故障・・・・・・・167P 第六章 出陣の秋 優れた人材・・・・・・・176P 性能向上の要求・・・・・・・183P 別れの挨拶・・・・・・・192P 謎の戦隊長自爆・・・・・・・197P 第七章 全戦闘機、特攻出撃せよ 幻の大戦果・・・・・・・213P レイテ決戦の主役「疾風」・・・・・・・223P 「疾風」の墓場フィリピン・・・・・・・232P 窮余のかっぱらい作戦・・・・・・・245P 沖縄の死闘・・・・・・・252P 第八章 悲しきフィナーレ 本土上空のB29邀撃戦・・・・・・・261P 敵機と編隊を組む・・・・・・・269P 戦隊を支える整備員の健闘・・・・・・・275P 資源不足で木製化・・・・・・・284P 飛行機工場の花・・・・・・・290P 二羽の折り鶴・・・・・・・296P 「疾風」アラカルト・・・・・・・306P あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・312P 文庫版のあとがき・・・・・・・・・315P
関連書籍
「大空の攻防戦」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「四式戦闘機『疾風』」を装備した第一練成飛行隊について 「遥かなる俊翼 日本軍用機空戦記録」・・・・・・・・・・・・・「四式戦闘機『疾風』」を装備した第一練成飛行隊について
関連項目
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