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書籍(参考資料)
「栗田艦隊 レイテ沖海戦秘録」
基本情報
「栗田艦隊 レイテ沖海戦秘録」
著者:小柳 冨次 出版社:潮書房 初版発行:1956年6月 JP番号:56009544 ASIN:B000JB0VEK
「栗田艦隊 レイテ沖海戦秘録」
著者:小柳 冨次 出版社:光人社 光人社NF文庫 定価(税込):530円(1995年) 初版発行:1995年9月16日 日本図書コード ISBN-10:476982095X ISBN-13:9784769820956
書籍概要
捷一号作戦に於ける第二艦隊(栗田艦隊)の作戦行動の様子を記述した戦史である。
本書の著者は、昭和19年(1944年)10月24日〜26日の比島沖海戦に於いて、第二艦隊参謀長として栗田艦隊司令部と行動を共にした小柳冨次元海軍少将である。本書は、昭和31年(1956年)6月に初めて出版され、その後文庫化された。
本書は、フィリピン諸島周辺に於ける捷一号作戦の準備と計画が詳細に紹介され、そして、昭和19年(1944年)10月に捷一号作戦が発動されてからの第一遊撃部隊(第二艦隊)の作戦行動、及び機動部隊(第三艦隊)や第二遊撃部隊(第五艦隊)の状況が説明されている。最後には作戦終了後に全般を振り返っての批評が述べられている。
各章の内容は以下の通りである。 第一章では、昭和19年(1944年)6月のマリアナ沖海戦後、有力な母艦部隊を失った第二艦隊(栗田艦隊)が次期作戦に備え、リンガ泊地で行った訓練の様子が紹介されている。また、小柳参謀長以下第二艦隊参謀と連合艦隊参謀が行った捷一号作戦に関する打ち合わせの様子が描かれており、その内容は以後の栗田艦隊の行動に大きな影響を与えるという点で非常に興味深い。この描写は他の文献に於いてよく引用されており、本書の中でも重要な部分である。 第二章では、連合艦隊司令部の策定した捷一号作戦の概要と参加予定兵力、そしてそれに対応するために栗田艦隊が行った各種準備や訓練の様子が紹介されている。 第三章では、水上艦隊に呼応して作戦の主体となるべく期待されたフィリピン諸島の基地航空隊の概要、特にその編成や兵力、飛行場の整備状況が概説されている。 第四章では、フィリピン諸島各地に対する米軍の空襲の状況と、昭和19年(1944年)10月12日〜16日に行われた台湾沖航空戦の状況が概説されている。そして、10月17日以降開始された米軍のフィリピン諸島への侵攻開始と、それに伴う日本海軍の捷一号作戦発動の様子が説明されている。 第五章では、捷一号作戦に於ける栗田艦隊の作戦目的であるレイテ湾の米輸送船団撃滅に対して、第二艦隊(栗田艦隊)の立場からこの目的の意味を評価している。即ち、ここで述べられている事は、当時の第二艦隊が如何なる意思をもって作戦に従事していたかという事であり、連合艦隊司令部と栗田艦隊との間に作戦目的の相違があったと言う重要な内容が述べられている。 第六章では、栗田艦隊が捷一号作戦発動を受けて出撃する際の状況、出撃後のパラワン水道に於ける米潜水艦の襲撃の状況、シブヤン海に於ける米軍の空襲と栗田艦隊の行動の状況が述べられている。また、栗田艦隊本隊と別行動をした西村艦隊及び第二遊撃部隊(志摩艦隊)のスリガオ海峡に於ける作戦行動の様子も詳細に述べられている。 第七章では、サンベルナジオ海峡を越えてレイテ島沖を南下する栗田艦隊が米海軍護衛空母艦隊と遭遇、直ちに砲戦に入ったレイテ沖海戦(米軍呼称:サマール島沖海戦)の状況と、米艦隊追撃中止後に栗田艦隊がレイテ湾突入を目指すも、やがて断念して反転北上に至るまでの様子が記述されている。この栗田艦隊の反転北上は捷一号作戦の事実上の失敗を意味するものであり、この描写も本書に於いて非常に重要な部分である。その後、栗田艦隊がブルネイ湾に帰着するまでの状況が説明されている。 第八章では、捷一号作戦発動に於ける栗田艦隊以外の部隊の状況、即ち、米海軍機動部隊を牽制する役割を担った第三艦隊(小沢艦隊)と第六艦隊(潜水艦隊)、そしてフィリピン諸島に展開した基地航空隊の作戦行動が記述されている。また、米軍によるレイテ島上陸作戦の概要、この作戦に於ける日本海軍の損害と戦果が纏められている。 第九章では、捷一号作戦に於ける栗田艦隊の行動、特にレイテ沖海戦に於ける米海軍護衛空母艦隊に対する追撃戦に関し、当時、栗田長官以下第二艦隊首脳陣が如何にして状況判断と決定を行ったかが詳細に述べられている。更に、その後のレイテ湾突入断念に至った経緯に関しても述べられており、当時、第二艦隊がおかれていた状況が、その当事者の立場から述べられている。また、同時に行動した西村艦隊や志摩艦隊、基地航空隊の作戦行動に関しても小柳元参謀長の所見が述べられている。 第十章では、レイテ島上陸作戦に於ける米軍の作戦行動に関して、日本軍、特に第二艦隊から見た批評が述べられている。 終章では、大東亜戦争全般の日米の海戦に関して、小柳元参謀長の所見が述べられている。
捷一号作戦に於ける第二艦隊(栗田艦隊)の行動に関しては今もなお賛否があるが、戦後、第二艦隊司令長官であった栗田健男元中将はこの事に関して多くを語らず、当時の様子は不明な点が多かった。本書は、当時第二艦隊参謀長であり、作戦中は栗田長官と始終行動を共にしていた小柳元少将によって執筆され、当時の栗田艦隊の行動の様子が詳細に記載されている。 本書は、捷一号作戦に於ける栗田艦隊の行動とその背景を知る上で非常に貴重な資料である。日本海軍の運命を決定付けた捷一号作戦の全貌を知るために、ぜひとも読むべき1冊であろう。
目次 (光人社 光人社NF文庫)
序・・・・・・・・・伊藤 正徳 序・・・・・・・・・福留 繁 第一章 捷号作戦への準備 本土出撃前の栗田艦隊・・・・・23P リンガ泊地における猛訓練・・・・・26P 捷号作戦に関する打ち合わせ・・・・・47P 第二章 捷号作戦計画の全貌 大本営の状況判断と作戦計画・・・・・54P 連合艦隊の編制・・・・・58P 突入作戦の研究訓練・・・・・64P 爾余の諸隊の動静・・・・・71P 第三章 比島のわが方の防備状況 大航空基地群の造成・・・・・75P 機能十分に果たしえず・・・・・78P 第四章 比島沖海戦の序幕 比島に対する敵の空襲・・・・・82P 台湾沖航空戦・・・・・85P 比島沖海戦の発端・・・・・90P 第五章 レイテ湾突入作戦の性格 避けられぬ遭遇決戦・・・・・94P 森厳なる統帥に徹せよ・・・・・100P 第六章 栗田艦隊の作戦と出撃 栗田艦隊の出撃・・・・・104P 進撃航路の選択・・・・・108P 敵潜水艦の奇襲・・・・・110P 未曾有の大空襲始まる・・・・・119P 戦艦「武蔵」沈む・・・・・122P 西村、志摩両部隊出撃す・・・・・110P 西村部隊の突入全滅・・・・・136P 志摩艦隊の戦闘・・・・・141P 第七章 レイテ沖の大海戦 奇跡的遭遇追撃戦・・・・・146P レイテ湾突入を断念す・・・・・158P 敵を見ず補給基地に向かう・・・・・163P 第三日の空襲・・・・・165P 栗田艦隊ブルネイに帰投す・・・・・169P 第八章 各部隊の戦況 機動部隊の出撃・・・・・171P 敵機動部隊を北方に誘致す・・・・・176P 航空母艦全滅す・・・・・179P 基地航空部隊敵を逸す・・・・・181P 初の特攻攻撃功を奏す・・・・・186P 先遣部隊ふるわず・・・・・188P アメリカ海軍の作戦・・・・・192P 比島沖海戦の総決算・・・・・199P 第九章 比島沖海戦の跡 作戦の跡を顧みて・・・・・203P 追撃戦の中止に悔いなし・・・・・207P レイテ湾突入を可とす・・・・・210P 西村、志摩両部隊のスリガオ海戦・・・・・215P 栗田艦隊の作戦指導・・・・・221P 協同部隊の作戦・・・・・226P 第十章 アメリカ海軍の作戦批判 米艦隊好機を逸す・・・・・228P 徹底を欠いた触接と攻撃・・・・・232P 見事なレイテ沖退却戦・・・・・236P 終章 海戦余禄 太平洋戦争の三大海戦・・・・・239P 日米海軍の作戦比較・・・・・243P 日本海軍の敗因・・・・・247P あとがき・・・・・・・251P
関連書籍
「太平洋戦争航空史話(上)」・・・・・・・・・・・・・・・・・西村艦隊の重巡洋艦「最上」索敵機に関して 陸軍飛行第三戦隊に関して 「空母ガムビアベイ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・米海軍護衛空母「ガムビアベイ」に関して
「猛き艨艟 太平洋戦争日本軍艦戦史」 ・・・・・・・・戦艦「大和」「武蔵」「長門」・・・・・・・・・・(第六章・第七章) 重巡「高雄」「愛宕」「摩耶」・・・・・・・・・・(第六章) 「空母瑞鶴 日米機動部隊最後の戦い」・・・・・・・・空母「瑞鶴」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第八章) 「重巡摩耶」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・重巡「摩耶」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第六章)
「戦艦入門 動く大要塞徹底研究」 ・・・・・・・・・・・・戦艦「金剛」「榛名」・・・・・・・・・・・・・・・・(第七章) 戦艦「山城」「扶桑」・・・・・・・・・・・・・・・・(第六章・第九章) 「戦艦武蔵」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戦艦「武蔵」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第七章)
関連項目
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